おまけ




柴凛から良質の粘土を貰った事もあり、それに、この前生成したとある宝珠を埋め込み、
前々から作ってみたかった森の妖精人形を作ってみた。顔は誰もが振り向く超プリティ。
背丈も50センチほどの緑の服と帽子を纏ったとっても愛らしい男の子妖精の人形だった。
全ては、作成図どおり―――――だった筈なのに……





バッサァァァァァァ!!




「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



「香鈴っ!!って、きゃっ!!」





バサバサっ!!





最初は香鈴、続いて秀麗の服の裾が大きくめくり上げられる。所謂、現代で言うスカート捲りだ。




……この、エロ人形!!




蒼麗は、自分の作成した妖精人形が次々とイタイケナ少女達の服の裾を捲りあげていく様に突っ伏した。




何故?何故?!






トタタタタタタ





バッサァァァァァァァ!!




「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」





トテテテテテテ




バッサァバサァァァァァァァァァァァ!!





「「「「「「「「「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」」





あちこちから女性の悲鳴が上がる。あのやろう!そこら中の女性を手当たり次第に毒牙にかけてるなっ!!




「蒼麗さん、どうにかしてあのエロ、じゃなくてとんでもない事をする物体を止めてくださいっ!!」




可愛い顔をしてハレンチな所業を堂々とする妖精人形。その捕獲に乗り出した州官吏達と
街の男達だったが、相手は捕まるどころか寧ろ男達を翻弄し、完璧に逃げ切る。そして時には挑発する。
それに、持っていた刀で叩き割りたいという思いを抑えつつ、静蘭は州官吏達、そして街の男達の
気持ちの代弁1割、自分の本音9割で蒼麗に頼み込んだ。




いいよ、静蘭さん……我慢は体に良くないよ(涙)




最初は冷静に構えていた静蘭も、大切な秀麗まで被害にあっては余裕などナッシング。
側に居る燕青と影月が、何時静蘭が爆発するかと恐る恐る見守っていた。



但し――





「大変だなぁ」



「ま、頑張って下さい」




と、上から緑翠、銀河のこの超絶美形の二人だけは、近くの家の屋根に座りのんびりとしていた。
助ける気も止める気もナッシング。その凄すぎる頭脳と武術の腕前と多岐にわたる才能を1ミクロンたりとも
被害にあった女性、または遭おうとしている女性達の為に使う気はないらしい。
なもんだから、当然ながら危機に瀕している女性達からは人でなしと叫ばれる――だろう、普通なら。
だが、この二人の場合。黙っていても漂う気品と知性、そして妖艶な色香と麗しい美貌のお陰で、
女性達は文句を言うどころか黄色い声を上げて倒れ、佇み――その間に、裾捲りの被害者は増えていった。
助ける気が無いなら来るな!!と男性陣達は言いたかったが、それも殆どの男性達が鼻から大量の
出血をし、血圧を上げ、脈拍と心拍を激しくさせ、自分の方にかかりきりとなっている為、そんな暇が
あるものは居ない。なわけで、静蘭達のように、緑翠と銀河の美貌にある程度抗体を持っているものへの
負担がよりいっそう増す。ってか、あんたら。この二人でそんなんだと、この二人の主が来たらどうする?
悩殺されて即死だぞ?だが――そんな静蘭達の心の思い等、当然ながら大量の血を流して痙攣する
者まで居る者達に届くわけもない。





「こらーーーーーーっ!!やめなさい、まーくん!!」





蒼麗が切れのある裾捲りを続けていた妖精人形を追いかける。





まーくん?





「あの人形の名前です。何でも、磨尋と言う名をつけたそうです」




銀河が屋根の上で足を組みながら説明した。





ガシッ!!




「ほら、捕まえた!!」




逃げようとする妖精人形を抱きしめるようにして掴む事に成功する。暫くジタバタとしていたが、
無駄な抵抗としるとおとなしくなった。




「まーくん、いい?女性のスカートを捲ったら駄目よ」




蒼麗が子供にするように説教をする。シュンとする妖精人形――磨尋。
そうして一通り、説教をすると、最後に蒼麗は聞いた。




「もうスカート捲りはしたら駄目だよ?」





コクコク





素直に応じる磨尋。蒼麗はその頭を優しくなでた。




「よし、良い子良い子」




じゃ、他のみんなにも謝って……と続けた所、目の前に磨尋は居なかった。
驚き、その姿を見つけたのは――








「「「「「「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」」」」」」」







「磨尋ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」








どうやら、今度は男にターゲットを変えたらしい。
次々と男達の「服を」剥ぎにかかった。なんて始末の悪いっ!!
というか、何故女性にした悪戯よりも過激な事をする?!




「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!蒼麗嬢ちゃん、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



「僕の服を剥がないで下さいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」




ああ……彩雲国一の武術の使い手と今年の国試状元及第の人まで毒牙に……。
そして事態は余計に混乱し、騒ぎは大きくなっていく。





もう、こうなったら仕方が無い。







「私の手に負えません」





投げた。









「「「「「「「「「「「「「「「「「「蒼麗ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」










人々の絶叫が蒼い空へと響き渡っていった。









終わり




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