IF〜もし、平和であったら

蓮璋と宰相の出会いバージョン



「君が……うちの妹を望んでいるという男は」
「は、はい」

そうか――

そう微笑んだ次の瞬間


召喚された暗黒龍


王都を覆い尽くさんばかりの巨大な龍が蓮璋に向けて放たれた


「きゃあぁ!兄様おやめ下さいっ!」


明燐が止めるが効果なし。

宰相はマジだった。

人の可愛い可愛い大切な妹。
遠くの地に行ってからも欠かさず文通は行っていた。
妹の帰りを楽しみにしていたというのに――こんな妙な男がくっついて来るなんてっ!


「虫は早めに消した方がいいですから」


今まで明燐に近づいて来た男達同様消し炭にして


「やったら潰すわよ?」


ガシっと肩を後ろから掴まれる。

思わず暗黒龍へ制止の命令を出してしまう。
それほどに、後ろから発せられるオドロオドロしいオーラは凄まじかった。

「果竪、離してくれ。これは大切な事なんだ」
「私にとっても蓮璋は大切だから絶対嫌」

「果竪はうちの妹とこの男のどちらが大切なんですか?」
「どっちも大切。宰相の事も大切だから、これ以上はやめてね?」

でないと、縁切るわよ――


言外にそう脅す果竪。
が、すぐにフッと笑った。

「って言っても、別に私如きが相手なら寧ろ縁なんてとっとと切っても良いもんね〜」


となると、縁を切ってから蓮璋を応援して共に戦うか――そうぶつぶつ呟く果竪に宰相はクワッと目を見開く。


「この男がそんなに良いんですかっ?!」

「うん」


0.2秒の返答だった。
流石にショックを受ける宰相。

「ってか、蓮璋の方がみんなよりも優しいもん」


そう言って、凍り付いている蓮璋に飛びつく果竪。
それはまさに兄にまとわりつく妹。

日頃、果竪をいじくりすぎている事を心から後悔した宰相だった。


「でも、一番好きなのは大根だけどね〜」


宰相を撃沈させた果竪は笑顔でそう宣言するのだった。