予告編?
「黎深っ!!」
怜悧冷徹冷酷非情の氷の長官として名高い彼――黎深を腕に抱き、真面目一直線ながらも
奇人として名高い彼――鳳珠は悲痛な叫び声を上げた。
何故なら――黎深の背に走る傷は、余りにも大きく、パックリと裂けたそこからは、止め処なく赤い血が流れ落ちているのだ。また、それは、地面へと流れ落ち、大地を削って赤い川を作っている。
不幸にも、それを目の当たりにした鳳珠の背筋に寒いものが生まれた。
この出血量と深すぎる傷――――このままでは、黎深は死ぬ。
黎深が………死ぬ?
あの、殺しても死ななそうな人物bPにランクインされる黎深がっ?!
何気に失礼な事を思いつつも、頭が混乱している鳳珠は、必死に出血を塞ごうとする。
しかし、大きく深いその傷から流れ出る夥しい量の血を止める事は、当然ながら無理であった。
「くそっ!!」
早く、早くしなければ――
顔面蒼白な鳳珠は、そこでちらりと後方を見た。
後に倒れ付す――邵可。黎深を切り裂いた彼は、彼らと共に鳳珠によって昏倒させられていた。
が、ほどなくして彼らは立ち上がるだろう。あの、闇よりも暗く、感情のない眼差しを浮かべながら――
「……早く、しなければ」
このままでは黎深が……
「……せめて止血だけでも」
「救急セットいりますか?」
「ありがたいっ!!……って、蒼麗っ?!」
「はい、私です。霄太師もいます」
と、何処からともなく現れた蒼麗と霄太師。
「うわっ!!黎深様っ?!」
蒼麗は黎深の余りの負傷ぶりに顔色をなくした。そんな蒼麗に畳み掛けるように鳳珠は叫ぶ。
「蒼麗、黎深の手当てを手伝ってくれっ!!くっ、血が無くなり過ぎている……輸血が出来れば――」
「輸血ですか?確か、輸血用の道具が」
「なにっ?!なら、頼むっ!!私の血を黎深にっ!!」
その途端、蒼麗は目をカッと見開いた。
「はい?んなもん無理ですっ!!」
「何故?!」
「何故も何も――天才肌且つ二重人格な如何にもAB型っぽい黎深様に、生真面目で
頑固過ぎる如何にもA型っぽい鳳珠様の血が受け入れられる訳が
ないじゃないですかっ!!」
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「確かに、無理そうだな」
その時、鳳珠の顔にはそれはそれは美しい笑顔が浮かんでいた。
「ですよねvv」
また、蒼麗も嬉しそうに微笑む。
「ちょっと待て。お前ら、血液型じゃなくて中身で無理だと判断してるだろ」
しかし、そんな霄太師の呟きに耳を貸す彼らではなかった……。
さて、黎深の運命は?
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