姉妹愛もほどほどに−6(笑)







ガッシャァァァァァァァァァァァァァァン!!






蒼花の背後にあった室の窓ガラスが音を立てて割れる。



細かく砕けたガラス片がキラキラと陽光を浴びて輝きながら、秀麗達を襲う。





即座に、青輝と銀河、緑翠は蒼花を護り、蒼麗は秀麗達を守るべく結界を作り出す札を発動させた。





が、その結界が完全に張られるその隙を突いて、ガラスを割って侵入してきたそれは目的の物を手に入れる――







「きゃあっ!!」




片手でその少女を抱きこむと、蒼麗が反応する前に再び窓へと移動し、その窓枠に足をかけた。







「ふははははははははははは!油断したな。我が主の花嫁として蒼花ぶっ!」





その後に続く蒼花の身分を示す言葉を言わせると自分の身分もばれる。
そんな危機感に、蒼麗の体は無意識の内に近くにあった木の置物を窓枠に足をかける男にぶつけた。




が、男はめげない。




「くっ!こんな事をしても無駄だっ!最早主の花嫁は我が手にある!これで、我が主が一気に権力を握るのだ!」




蒼花を花嫁に。
と言う事は、命を狙う方ではなく、蒼花自身を手に入れ花嫁とした上で、地位や身分、家柄、権力などを得ようとする方。




となると、命の心配はない――が









「……はい?」






男の失言をなんとか封じた事により、冷静さを取り戻した蒼麗は、男が捕らえている少女をよくよく見た。




そして……青輝達に守られている少女を見る。







って、ちょっと待って。






「つ……イタタ……」




ガラスの割れた衝撃に、臥せっていた秀麗達がよろよろと起き上がり始める。





そして――





「こ、香鈴っ?!」





突如乱入してきた男の腕に抱かれて気絶している香鈴に、秀麗と影月の顔は青ざめた。






って、あ、良かった。やっぱりあっちが香鈴で、青輝達に守られているのが蒼花。





というか、そもそもあの蒼花が、あんなに自然な感じでか弱くイタイケナさを全面的に醸しつつ、男に抱えられて気を失っている訳がないよね。





妹を知り尽くしている蒼麗はうんうんと頷き――慌てまスイッチが入った。






「って、馬鹿っ!そっちは香鈴さんですっ!思い切り人違いです、明らかなる貴方の間違いですっ!
その人を連れてったら貴方の人生はジ・エンド間違いないですっ!」





しかし、そんなお馬鹿な刺客は自分の非を認めなかった。



ってか、予め顔写真でも渡されていれば解るはずなのに





「ふっ!この私をだまくらかそうとしても無駄だぞっ!お前達が何と言おうとこの少女は連れて帰る。そして我が主の花嫁となるのだっ!」





鼻高々に言う刺客。




――こいつ……きちんと事前のチェックをしてこなかったな。






蒼麗が頭痛を堪える様に目を瞑る。
が、そんな様子を誤解した刺客はというと




「そう悲観する事もあるまい。寧ろ、我が主に望まれその花嫁となると言う事は光栄な事だぞっ!権力者の正妻となるのだからな」



「どうせ、その他に愛人盛りだくさんでしょうが」



「…………………………」




あ、ドンピシャ図星。





「って、煩いっ!とにかく、蒼花ぶっ」




蒼麗は再び男が失言するのを止めるべくその顔面に木の置物を命中させた。





「くっ!覚えていろ!」





そう叫ぶと、刺客は香鈴を片手に窓から逃げ出していった。





たぶん、本人が聞けば物凄く不本意だが、捨て台詞を吐いた上にあの走り方。
絶対に、逃げている。なんて情けないアホな刺客なんだろう。





が、そんな刺客に哀愁を漂わせている暇は当然なく、蒼麗は一目散に窓から飛び出して行ったのだった。








―戻る――拍手小話ページへ――続く―