姉妹愛もほどほどに−2(笑)









「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!」









春の砂浜から歩いて数分。
そこにある紅家専用別荘にて、蒼麗から話を聞いた秀麗達は一様に叫んだ。




そして――






「その子が蒼麗ちゃんの双子の妹ぉぉぉぉぉっ?!」





秀麗の更なる絶叫に蒼麗は力なく頷いた。
その隣では、蒼麗の双子の妹である蒼花がまとわりつき、緑翠と銀河が青褪めている。





「そ、そうだった―」






バンッ!!








「私は納得できない!!」




楸瑛が机を叩いて立ち上がる。その目は真剣で、秀麗達は思わず圧倒された。




「ら、藍将軍?」




恐る恐る秀麗が声をかける。





「納得できない。出来る筈が無い!!何故なら――明らかに蒼麗殿と胸の大きさが違うじゃないかぁ!!」





楸瑛はビシッと蒼麗達を指差した。



確かに――真っ平らで寸胴な体系の蒼麗とは違い、蒼花は年齢に似合わず服の上からでも解る程に形も良く
大きくて柔らかそうな胸をしており、腰もくびれ、ほっそりとした足をしている。




って、






「何処見てるんですかこの馬鹿がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」






秀麗の顔面右ストレートが見事に楸瑛の顔面に決まる。




「ぐはぁぁぁぁぁ……」





楸瑛は倒れた。




「さ、蒼麗ちゃん邪魔者は葬ったわ」



話を続けて――と笑顔で先を促す秀麗にその場にいた蒼花、銀河、緑翠以外の全員が後ずさった。
彩雲国でも名高い将軍を一撃で沈めるとは……彼女こそ最強ではないだろうか?




「え、え〜と……その、楸瑛様の言う事も最もだと思います」




「蒼麗ちゃんっ?!」




「ふふ。確かに、私と蒼花は違います。双子なのに、何から何まで平凡で力無しな私とは違い、蒼花は容姿端麗、文武両道、
聡明で打てば響くような機知であり、歌舞音曲を始めあらゆる方面に秀でた幼馴染達に負けず劣らずの多才です。
しかも、蒼花は愛らしくて可愛らしいだけではなく、人を統べ、上に立つカリスマ性というものも持っていて……そう、
性格の腹黒さと救い様の無い性格破綻だけを除けば完璧なんです!!」






何気に性格否定っ?!






秀麗達はちらっと蒼花を見る。そして――いっせいにそらした。



くすくすと子悪魔な笑みを浮かべている蒼花の後ろから真っ黒なオーラが出ている――気がする。





蒼麗ちゃん。貴方、妹を見る目が肥えてます!!





しかし――






(口を開かず黙っていれば数千年に一度見られるか見られないかの凄く可愛くて綺麗で美少女……)





ようやくなんとか直視できる位にはなっているが、それでも気を抜けば即座に魅入られてしまう美貌。
いや、美貌だけではなく、少女から発せられる圧倒的な気品と気高さ、そして妖艶な色香も原因しているだろう。


また、少女の装いは本当に質素な街娘程度の代物なのに、この少女――蒼花が纏うと
それさえも清楚で慎ましやかな装いへと変化し、蒼花がもつ清純可憐さを更に引き立たせている。




隣にいられる蒼麗が本当に凄い。




すると、蒼麗はそんな皆の心を感じ取ったかのように笑って言った。



「私の場合は慣れてるからだと思いますよ。何せ、私の弟や両親、そして幼馴染達一家達も綺麗、可愛いなどという
美形の種類こそ違えど、蒼花に負けず劣らずの美貌とスタイルを持ってますから……。あ、後は才能や能力の高さもそうですね。
しかも、結構やれば何でも出来るらしくって」




だから、大して感慨を感じるものではないんですよ――と蒼麗は告げた。



秀麗達はあっけにとられた。
しかし、常々感じていた蒼麗の審美眼の凄まじさに関しては、こういう人達に囲まれて育ったのならば納得できる。
秀麗達を驚愕させた発言――銀河と緑翠の美貌を何処にでもいる――なんてのも簡単に言い切れる。




そうして秀麗達は更に蒼麗を尊敬する事となる。そしてきらきらと尊敬の眼差しを向けたのだった。






――が、そんな眼差しを向けられている蒼麗はというと――









(蒼花……)



(何?姉様vv)



(髪は黒く染めてていいけど、どうして瞳はオッドアイのままにしておくの?!)



蒼麗は小さな声で蒼花の瞳の色を指摘した。元々、蒼花の元の髪の色は非常に目立つ色であり、それに加えてオッドアイの瞳となると
中々忘れられない容姿となる。ただでさえ、人智を超えた美貌をしているのだ。少しでも目立たないようにしなければ。
なのに、蒼花はにっこりと微笑んでいった。





(忘れてただけvv)



(蒼花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)



(別に良いじゃない。この国の者達だって色々な色があるし)





確かにあるが、それでも蒼花ほどの美貌の持ち主は――黄 鳳珠以外いない。
ってか、あの黄尚書は別格だ。比べる方が本気で間違っている。





(今すぐ瞳の色を――)



(下手に勘繰られてもいいの?)





蒼花がくすりと笑って呟く。


蒼麗がグッと言葉を詰まらせた。





(ふふ、それに――オッドアイの瞳ぐらい、珍しいものでもないわ)





そう言うと、蒼花は紫色と紺碧色の瞳に悪戯な光を浮かべる。




そんな妹に、蒼麗は大きな溜息をつくのだった。






―戻る――拍手小話ページへ――続く―