姉妹愛もほどほどに−3(笑)
「で、蒼花は結局何で此処に来たの?ってか居るの?」
未だに妹に見惚れてしまっている秀麗達を他所に、蒼麗は最も且つ基本的な質問をした。
というか、そもそも妹はこの様な場所にいる存在ではない。
が、妹はと言うと
「だ〜か〜ら、お姉様に会いに来たに決まってるでしょう?」
「え?!それ、本気だったの?!」
「もっちろん〜〜vv私がお姉様に会いに来る以外に此処に来る筈が無いじゃない!!」
「え、仕事とか」
「んなもん青輝にでも任せるわよ」
と、勝手に人の許婚に全部押し付ける気満々な発言に、蒼麗はそっと心の中で涙した。
許婚との仲は凄まじく微妙だが、この妹に何時も振り回されているのを見るとちょっと……。
って、まあ元々許婚と妹はとても仲が良いから大丈夫か。
でなければ、筆頭護衛なんぞあの許婚がやるはずはない。うん、絶対!!
勝手に自己完結してしまった蒼麗だったが、とにかくこの妹は元の場所に戻さなければ。
「ねぇ、蒼花。あのさ、せっかく来た所悪いんだけど――今すぐ帰ってくれる?」
「絶対に・い・やvv」
可愛らしい声、可愛らしい笑顔、そして漂う妖艶な色香に秀麗達は意識が飛びかけた。
まずいっ!!このままでは秀麗さん達の精神衛生上がっ!!
自分が完全になれているのでどうって事は無いが、妹の色香や魅力、そして美貌は他の一般の者達にすると
甘い砂糖を通り越して毒にもなりうる。
ってか、その無駄に良い母譲りの美貌と自身がこれまでに身に着けた色香と魅力を全力で押し隠せっ!!
そもそも、美しさというものは、その人の美貌だけではなく、その人が今まで培ってきた経験が大きくものを言う。
故に、その経験から美しさを損ねてしまうものが居れば、更に美しさと魅力を増す者も居る。
妹は他の幼馴染達同様後者に属する。性格は破綻的に悪かったが、経験にしは恵まれていると言う事だ。
と、本来なら喜ばしいことだが、今の蒼麗にとっては秀麗達の方が心底大切だった。
「蒼花、良い子だから今すぐ帰りましょう!!ええ、帰りましょう!!ほら、お姉ちゃんが
春ちゃん達に連絡を取ってあげるから」
「あ〜〜ん、絶対に嫌よvv帰るのならばお姉様も一緒じゃなきゃ嫌vv」
なんか堂々巡りになっている気がする。っていうか、なっている。
「蒼花、お願いだから!!」
「そ、そうですよ!!蒼花様」
「婚約者様や護衛の方達、我が主の君も大層心配して御出でですっ!!ですから、どうかっ」
緑翠と銀河も口々にそうかを説得し始める。
しかし、それも蒼花の殺気の入り混じる鋭い一睨みに押し黙る事となる。
「ふん!!青輝の部下如きが私に意見できると」
「思っとるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゴォォォォォォォォォォンっ!!
「「「「「「「「蒼麗ちゃんっ?!」」」」」」」」」
秀麗達は今、決してありえない光景を見てしまった。
そう――言い表す事の出来ない正に絶世の美少女を、渦巻き眼鏡をかけ、髪を三つ編みにした
一見すると地味で鈍間そうで何処にでもいそうな少女が拳骨で殴るなど。
「あ〜〜ん、痛いわお姉様ぁぁぁぁっ!!」
「緑ちゃんと銀ちゃんは蒼花の事を心配して言ってくれたのよ!!なのに」
「い、いいえ、いいんです蒼麗様っ!!」
「そ、そうですよ。というか、そもそも蒼花様の聡明さと打てば響くような機知の高さは私達では及びも就かないほどです。
ですから、私達が意見するのがおこがましかったのです」
「ちょっとマテやお前ら!!」
申しわけありませんでしたと素直に謝る緑翠と銀河。
そして、それを偉そうに受け入れる自分の妹――蒼花。
確かに、蒼花はとても頭がよく聡明だし常識と倫理を弁えている。自分が間違っていれば謝罪だって心からできる。
序に言えば、銀河と緑翠の上司と同等の立場の存在だ。
が、此処に無断で来た事ぐらい叱り通せっ!!
ってか、蒼花!!今回のは自分が間違ってるだろ!!
なのに、何だその足を組んで偉そうにふんぞり返る姿は!!
「蒼花、今のは蒼花が悪いわ。謝りなさい」
「は〜〜い、緑翠、銀河、私が悪かったわ。しかも、調子に乗りすぎてたわ」
と、以外にも素直に謝る蒼花。
彼女自身も、ここらで謝らなければ姉が爆発する事を察知していたらしい。
まあ、例え爆発しなくても、姉がそう言うのならば無条件で謝罪でもなんでもするが。
蒼花のシスコンは筋金入りであった。
一方、謝罪を受けた緑翠と銀河は恐れ多いとばかりに恐縮する。
何故なら、絶対の尊敬と敬愛、そして忠誠を誓うのは蒼麗の許婚にだが、その他――蒼麗を含めた蒼麗の家族や幼馴染一家達、
そして蒼麗の許婚の家族達もまた、彼らは心からの忠誠と敬愛を捧げていたりする。
唯、中でも蒼麗の許婚は別格であり、何かあった時には速攻で蒼麗の許婚につくという違いはあるが。
その為、敬愛と忠誠を捧げし 一人――蒼花の謝罪に彼らは危うく心臓を破裂させかけた。
だが、それから間も無くして今度は彼らの寿命が縮まりかけるのだった。
それは――
「ああもう、蒼花!!お願いだから戻って」
「蒼麗の言うとおりだ。さっさと帰るぞ」
凛と響くその声に、その場にいた全員が声のする方を振り返る。
そこに居たのは――
「しょ、しょ、しょ、しょ、しょ、青輝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ?!」
―戻る―/―拍手小話ページへ―/―続く―