再会は笑顔と共に−7




「ようやく着きましたね」



茶州州都上空の空に浮かぶ銀河は後方の方で同じく浮かんでいる緑翠に顔を向けた。



「で、蒼麗様の反応は?」




「で、だからごめんって。は?そこで何で浮気になるんだよ!!って、馬鹿!!お前、浮気なんてしたら
相手殺すぞ!!孕ませるぞっ!!」




何時の間にか、遠距離の相手と通信する事が可能な仙鏡を使って勝手に人の妹と
会話している緑翠に、銀河は切れた。因みに、緑翠には許婚が居るが、
その相手は銀河の年の離れた妹でもあった。




「だから、この埋め合わせは」



「銀河?」



絶対零度の声が耳元を貫く。ヒッ?!と振り返れば、そこには素敵なまでにお怒りの
銀河が後方にブリザードを吹雪かせていた。因みに、この時下にある州都では
季節外れの大吹雪が起きていたりする。



「え、えっと……(大汗)」



何とか宥めようとするが、良い言葉がうかばない。



そして次の瞬間








「この馬鹿がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」









そして茶州州都には、緑翠が受けた攻撃の余波で数千もの雷が降り注いだ。
御陰で、香鈴と春姫によって占いに連れ出されようとしていた秀麗が大パニックとなって
部屋に引篭もり、泣く泣く占いに行く日が翌日に延期されたのであった。






「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





「秀麗様?!大丈夫ですよ!!もう雷は収まりました!!」





「それにしても凄い雷でしたね。その前には大吹雪もあって」





「そ、そうですね……って」





蒼麗は何だかとっても嫌な予感が頭から離れなかった。






(もしかして……)





その予感は、翌日当る事となる。













「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(泣)」



春姫と香鈴に引き摺られ、秀麗は占い師の元に連れて行かれる。
しかし、昨日の雷来襲事件によって怯えまくっていた秀麗は本気で抵抗した。
だが、香鈴達も負けては居ない。木に、家に、そこら道行く人にしがみ付いて拒否する
秀麗をその細腕で引っ張っていく。まるで売られて行く子牛のような秀麗だった。



また、秀麗を少しでも元気付けようと外出に誘い、占いに行く事になったというのに、
これでは本末転倒である。




が、蒼麗はそんな3人を後から温かく見守った。






っていうか、自分の考えで頭が一杯だったのだ。






(やっぱり……いや、大丈夫……でもでも)




前も来たし。と言うか、そもそも家族や周りの自分に対する執着度を見ていれば、
絶対に来るとは思う。が、彼らは隠密で来る。間違っても、あんな風な事はしない――





「へいへいそこのおねえちゃん!!ぼくとそこらでお茶でもしないかい?!」





と突如、お前、何時の年代の若者だよ!!と突っ込み度満載なナンパ男達が
春姫と香鈴の前に立ちふさがった。



――が






「……またか」




蒼麗は溜息をついた。
何故なら、彼らは今までも何度もやって来た――春姫と香鈴目当ての男どもの
一人だったからである。



そもそも、街を歩く為に細心の注意を払って春姫と香鈴も地味な衣を身に着けていた。
が、元々が教養と品位を極めた高貴な姫である春姫と、元後宮女官でやはり教養と品位を
厳しく叩き込まれて大切に育てられた香鈴である。まあ、その点は秀麗も同じだが、
はっきり言って見た目と纏う清純可憐さに至っては、残念ながら春姫と香鈴には
敵わないらしい。寧ろ、しっかりとした逞しい女性に見えるようだ。(物凄く心外だが)
その為、こうして春姫と香鈴目当ての男達が道を歩くたびに砂糖に群がる蟻の如く
寄ってくるのである。


そして、秀麗と地味で鈍間そうな蒼麗には見向きもしない。
隙を見ては、春姫と香鈴を連れてさっさと立ち去ろうとする。




「ねぇねぇ、ボク達と一緒に行こうよ〜vv」




一人が甘ったるい声を出す。どこぞの金持ちのボンボンらしい。



すると、それまで蒼麗の足元で二つの黒い鞠のような影と戯れていた莱が頭に飛び乗ってくる。


因みに、莱が戯れていた黒い鞠のような影は、紅杜邸の中を何時もうろついている
ものであった。何時もは、本当に家の中でだけ見かけるが、今日は珍しく後を
ついてきていたらしい。餌代もかからないので、秀麗に至っては少なからず
愛着も湧いて来ているとの事だった。



が、その秀麗はというと




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」




最初の内は片っ端から春姫と香鈴に言い寄る男達を追い払っていた秀麗だが、
今も町の到る所にある雷が落ちた痕跡に、何時しか大パニックとなっていた。
そして、今はもう既にそれが頂点に達しているらしく、
春姫と香鈴に言い寄る男達を見ても動こうとしない。ってか、家に逃げ帰ろうとしている。





「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!雷大嫌いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」





しかし、悲しい事に香鈴と春姫によって羽交い絞めにされて動けない。
どちらかと言うと、秀麗の方がか弱い囚われのお姫様――に見えない事も無い。



なんというか……男らしい嫌がり方をしている。



これが




「私、雷が怖くて!!きゃっ!また光ったわ!!」




なんて言いながらフラッと倒れていく儚げな感じを全面に押し出せればいいのだが、
秀麗は男らしく全力で可憐な少女達を引きずらんばかりに逃げようとする。




ダメダメである。




「ねぇねえ、そんな子はさっさと家に帰ってもらって。ボク達と遊びに行こうよ」



男の一人が春姫の腕を掴む。



「春姫様っ?!」



「おっと、君はこっちだよ」



他の男が香鈴の腕を掴んだ。そして、ペイッと秀麗を引き剥がして道端に突き飛ばす。



「じゃあね」



男達は嫌がる香鈴と春姫を連れて立ち去ろうとした――




しかし、そう世間は甘くない。






ギッ!!




蒼麗の頭の上で立ち上がった莱が威嚇したかと思うと――次の瞬間、その口が
カポッと開き、長い筒――っていうか美しい銀の光を放つ銃口を前に出す。





『ターゲット確認。ロック。発射します』





「はい?」



当然ながら蒼麗は嫌な予感がした。冷や汗もダーラダラ。



そして次の瞬間







ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドッッッッッッッッッ!!!!!









「「「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」」」」」






莱の口から飛び出した銃口から幾つもの銃弾が飛び出してくる。
しかも、その銃弾。最初は、莱の小さな口から出てくる細い銃口に入る程度の大きさなのに、
飛び出した途端、ほどなくして大きくなり、マグナムの弾ぐらいの大きさと威力で持って
男達に襲い掛かる。しかも、発射スピードはマシンガン並み。



そうして、一方的な銃撃戦が行われていく。



――て





「何人の頭の上で銃撃戦を繰り広げてるんじゃきさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





人の頭の上で銃を打ち捲っている莱に蒼麗は絶叫した。
いや、絶叫程度で済んでいる所が蒼麗である。下手したら気絶ものだ。



しかし、莱は完全無視。春姫、香鈴、秀麗、そして道行く人達を綺麗に避け、ムカツクナンパ野郎だけを綺麗に
狙って打ち続ける。もしかして、一流の射撃手だったりして……。





「って、彩雲国で銃を使うなこの馬鹿チンチラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





蒼麗はグワシッと莱を掴み取ると、その頭を叩いて銃口を仕舞った。
ってか、何時の間にそんな危険過ぎる技をお前は身につけたんだ!!




ギッギッギ!!




「何?青輝ちゃんにならった?!って、人の神獣になんて事をっ!!」



蒼麗は切れた。帰ったら、速攻で問い詰めなければ。



因みに、莱にこんな事を教えた本当の理由はと言うと、蒼麗に近寄ってくる変態や
痴漢を撃退する為。ってか、始末する為。蒼麗の周囲の者達にとって、
蒼麗に危害を加える物は一切の余地もなく始末する対象なのである。




「……って、これ、どうするの一体……」



危うく始末されかけた恐怖に気絶しているナンパ野郎どもは別として、穴ぼこだらけの道。




「う〜〜……補修するしかないよね」




そうして、蒼麗は穴ぼこだらけの道を補修する事になる。




が、莱はと言うと





「お〜いいぞぉ!!」



「きゃぁぁぁん、かわいい〜〜vv」




道行く人達や、さっきの銃撃戦を見物した人達に大人気となっていた。




よって、道の補修を終えた蒼麗に再び怒鳴りつけられたのは言うまでも無い。













こうして、占い師の所に辿りつくのが更に遅くなる一行だった。









―戻る――二次小説ページへ――続く―



                         ―あとがき―

はい、再会は笑顔と共にの第七話をお送りします♪
って、今回はいきなりの銀河の怒声。
と、同時に彼は素敵に秀麗が嫌いな物を落としてくれました。
これで解ってやっていたら敢然に嫌がらせですね。でも、銀河は秀麗の事は嫌いでは
ないので、ほぼ10割がた怒りで我を忘れています。また、見たは地味で鈍間そうな蒼麗は
そこらの男の人に相手をされませんでした(泣)が、本人は気にしていないので問題は
ありません。でも、秀麗に言い寄らない男どもは本当に見る目がありませんね。
国王や茶家の次男坊まで虜にした傾国の女性だと言うのに……。
そして……たぶん皆さんが驚かれた莱の銃撃戦。記載してあるように、
蒼麗の許婚が教えました。そして、あの銃口は術で作り出されております。
って、こうなると蒼麗は莱以下なのか?
力無しなので。精霊とか力のある道具に頼らないと術の使用が出来ないし……
皆様、どうでしょう?


それでは、此処まで読んで下さって有難うございますvv