〜第三十五章〜激闘〜









                       落ちこぼれ







それが皆の私に対する評価






けれど……仕方がない………だって………私は力なしなのだから







――でも……………本当は、少し違う






それは……最初から力を持っていない訳ではない。力を持っているのに……使えないのだ。





全ては、制御できない程にまで強すぎる力。多くの者達の努力でようやく封印出来た
危険な代物。けれど……その封印も完全ではない。自分の意志一つで解除できる。





でも……解除は……しない。そして、封印から少しだけもれている力も使わない。
何故なら………使用したが最後、毛糸で編まれたセーターから解れた糸を
引っ張ったが如く、あっけなく全ての力が解放されるから――。





それは……破滅へのカウントダウン





再び封印を行えるものが居なければ決して止まる事のない………





だから自分は力を使わない






でも







それでも出来る事は多くある。そして……力が使えなくても、力のある道具は使う事が出来る。



だって、それらを大いに利用して……今まで生きてきたのだから





どんな苦難も乗り越えて……





だから、今回も出来る






この――






風雅刀で――――っ!!










淀んだ空気を切り裂き、暗い中を幾つもの銀の煌きが舞う。
その鋭い刃を寸での所で避けると、蒼麗は間合いを詰めて次の攻撃を行おうとする
絳攸をなぎ払う。風雅刀が起こす小さな突風で、絳攸の体が後ろに飛ぶ。







ドサッ!!








紙の山に絳攸の体がぶつかり、重みで埋もれる。だが、ほどなく這い出てくるだろう。
それでも、ほんの束の間出来た休息の時間に、蒼麗は額から流れる汗を拭った。
別に、室内が暑い訳ではない。超人的な絳攸の動きから繰り出される攻撃を防ぎ、
牽制するのにかなりの運動量を要求されるのだ。彩雲国の王を守るべき羽林軍の将軍でさえ
こんなにも動かないだろうと言う量を既に、蒼麗は超えていた。
だが――荒い呼吸は直に戻る。案外自分は体力があるのかも。そんな事を思いつつ、
蒼麗は笑った。すると、それを不思議に思った契約精霊――風祢が首をかしげる。






『一体どうした?』






キョトンと首をかしげた風祢は美しいというよりも可愛らしかった。
しかし、気が付けばその姿は完全な具現化をする気がないのか半透明であった。
完全な人化をしていた契約時とは違い、一歩手前の人身化すらしていないその姿に、
蒼麗は思わず苦笑をした。




そもそも、精霊など異形の人ならざる者は人間の居る所に降りて来る時は普通に人間に
化ける。それをそちらの世界では人化といい、髪や瞳の色などの姿形―ー即ち外見を
普通の人間と殆ど変わらないまでに変化させ、またその際に作り出した肉体という殻で
自身の持つ力を覆い隠してしまう。つまり、見た目上は殆ど人と変らない形へと化けるのだ。
この場合、殻に遮られ力も殆ど使えなくなる。一方、人身化という物は人化とは違って、
本性――つまり変化前の特徴を比較的多く残す変化を言う。
こちらの変化は見た目的には変化前よりは人間に似ているが、その瞳や髪の色、
時には肌の色などが人間には決してありえない色を有し、また力も完全に覆い隠されない。
つまり、この変化は本来の姿と完全な人化の丁度中間的な変化に当る物である。
また、この変化は完全なる変化よりもそれを行う者にとっても負担が少なく、
人ならざるもの同士が其々の力を影響させない為に取る場合、またその他の場合に置いて
行われる事が多い。因みに、人身化による変化後の姿は人身と呼ばれる。
しかし、確かに此方は便利ではあるが、やはり人里に下りる場合、そして人と接する場合は
殆ど役に立たない。それは、人身と化した人ならざるものを姿形が違うだけで人間達が
化け物と呼び追い回すからだ。人と言う物は、自分達と少し違うだけで他者を排する
残酷な一面も持っている。それは外見然り、内面然り。
中にはそうでもない人も居るが、そう言う人間達はほんの少数派だ。
その為、昔は人身しか出来なかった人ならざるものが、相手に危害を加える気を
これっぽっちも持っていなかったにも関わらず、追い掛け回された挙句、退治される事も
多かった。故に、現在では用事があって人里に降りる場合は絶対に人化の変化を
行う事を義務付けられており、人ならざる者達は成長と共にそれらの変化を学んでいく。
即ち、人里降りる為の人化の法と、使い易く便利な人身化の法の二つを。
そして、時と場合に応じて使い分けていくのだ。なので、当然ながら人ならざるものである
風の精霊――しかも年齢的には若い風弥も出来る筈であり、現在人里に居ると言う事でやる
必要があるのだが……




(いや、ま、別に良いんだけどね)




普通の人である絳攸は今の所可笑しくなっている。だから、別にこのままでも大丈夫だろう。
しかし……外に出た時はそれでは済まない。当然ながらまともな人間も居るだろう。
故にそのときは――力ずくでも人化させなければ。




「風祢さん、何ですか?」



『いや……この様な時に笑うとは凄いなと……何か楽しい事でもあったのか?』



その言葉に、今度は蒼麗がキョトンとするが、直に面白そうに笑った。



「ふふふvvいえね、私って案外体力があるんだって自覚し直していただけですよ」


『そうなのか?』



「ええ。実は私、体育の授業はそうでもないんで」



平凡すぎるほどに平凡な自分の成績に思いを馳せ、蒼麗は笑う。



「でも、まあ今はそんな事はどうでもいいんですけどね。それよりも、風祢さん。
今はいいですが、外に出る際にはきちんと変化して下さいね」



しっかりと人化する様に釘を刺す蒼麗に、今度は風祢が笑う。
但し、その笑いは苦笑であったが。



『わ、解った。外に出る際にはきちんとしよう。だから今はこのままで居させてくれ。
変化するのは疲れるからな』



人化も人身化も異形の人ならざる者達にとっては生きていく上で必ずや習得しなければ
ならない能力。しかし人身化はともかく、特に人化によって作り出された肉体という殻に力を
阻まれる事は、あるがままに力を放出し続ける人ならざる者――特に、精霊にとっては
疲労の元でもあった。何故なら、殻に阻まれた力は、暴走せぬ程度に発散されている
本来とは違ってたまり続ける一方だからだ。湖だって許容量以上の水が溜まれば溢れて
辺りは水浸しとなる。その為、種族によって異なるものの、特に外に向って力を放出し続ける
種族に至っては、長い間人化している事が辛くさえ感じるのだ。風祢は風の精霊で
その種族には入らないが、それでも何もせずに居るときに比べれば、疲労は大きくなる。
まあ、人化し続ける事でそれなりに力は使うが、時間が長いとそれでは追いつかないらしい。
その為、出来れば本性で居る事を人ならざる者達は望む。よって、人里に行く場合は
必ず人化しろと言われても、もし相手が全てを受け入れてくれる者、または本性を現しても
双方に危険が及ばないのであると解れば、その時は喜んで変化を解く事もあったりする。
今の風祢が正にそうである。




「解ってます。ふふ……まあ外に他の人が居なくて私だけならば……
人身化でもいいんですけどね」




そう言うと、蒼麗は風雅刀を構えなおす。思ったよりも休む事が出来た。
が、再び行き着く暇もない戦いが始まる。生まれたばかりの小鹿が立ち上がるかの
如き動きで這い上がってくる絳攸に、蒼麗は視線を向ける。




「絳攸様の肉体も限界に近づいてますね」




だんだんと攻撃を受けて起き上がってくる時間が長くなっている。着実に体にダメージが
溜まっているのだろう。そして……あの超人的な動きが絳攸の体に更に
負荷をかけているのだ。



(楸瑛様や静蘭さんのように鍛えられた方と違って、護身術程度にしか鍛えていない
絳攸様の肉体はそう鍛えられてない。このままあんな超人的な動きをしていれば……)



体にかかる負荷は限界を超える。そしてその先に待つのは――






そして――





「もう頃合ですね……」



蒼麗は小さく呟くと、風雅刀を見詰める。



『使うのか?』


「はい。その為に……今まで立ち回ってきたんですから」



この時の為に、蒼麗は絳攸の体力を減らすべく立ち回ってきた。そう――半分は蒼麗が
わざと絳攸の体に負荷をかけたのだ。全ては、絳攸を止める為に。力なしの自分では
確実に仕留める事は難しい。その為、予め出来る限り相手の体力を削る必要があった。
死なない程度に、出来うる限りで――。




「さあ、行きますよ――絳攸様!!」




風雅刀が、そして風祢の体が青い光を帯びる。





「風の――枷っ!!」




高らかに蒼麗が言う。それと同時に風雅刀が横になぎ払われていく。




超人的な動きを見せる絳攸でさえ、逃げる暇はなかった。
いや、体力がもう少しあればもしかしたら違ったかもしれない。
しかし……蒼麗の巧みな罠に嵌り、体力を大幅に削られた今、風雅刀から発せられた
それから逃れる術はない。襲い掛かる風は絳攸の体を取り巻き、手や足、首、そして
胴に絡みつくと、其々透明な鎖のついた枷へと変わる。動きを封じられた絳攸は、
それでも逃れるべく抵抗するが、ガシャガシャという音がなるだけで、
手足首、そして胴体に嵌った枷は決して外れる事はない。





「無駄ですよ。風祢さんの力で作り出された枷なんですから」





相手を傷つけずに捕獲する、風系統の術の中では比較的高度な拘束術――『風の枷』。
風を操る術者が高位の術者となる為に、まず学ばなければならない術の一つ。
その発動には複雑な操作とある程度の力が術者に求められる。
そもそも、術というものは、高度になればなるほど複雑な操作と強力な力を必要とするのだ。





――が、実際に術を発動させた蒼麗は能力の扱えない『力なし』。





はっきりいって、術を発動させるなんて普通なら出来やしない。
唯一例外として、力を持った道具――風雅刀などが最初から内包する力だけを、
ようやと扱う事が出来る位なのだ。しかし、それでは風雅刀の元々の能力――風や嵐を
発動させる単純系のものしか使用できず、絳攸を傷つけるのは必死だ。
……まあ、他にも風の精霊を召還する特殊能力はあるが、相手が拒否ればそれまでである。
また、問題はそれだけではなく、風の力を纏いし風雅刀。それは確かに強力な力を持った
刀ではあるが、内包される力には当然限りがあり、特に複雑な術の使用になると、
本来の力の使用とは違ってその力の消耗も激しくなる。当然ながら、内包される力を
使いきれば新たに力が補充されない限り唯の刀となってしまうのだ。


その為、ある程度の力と操作が必要な術――『風の枷』を使用するべく、
蒼麗は他から――この為に召喚した風精霊である風祢の力を借りた。
術の発動時に、風祢に風雅刀に力を送り込んでもらい、複雑な制御を手伝って貰ったのだ。
そして、風祢は風の精霊族の中でも上級レベルに属する力の持ち主だ。
一介の人間に解く事はほぼ無理である。




「さてと……動きを封じた所で、絳攸様を元に戻さなきゃ」




何が原因でこうなったのかは知らないが、取り合えず――色々とやってみれば
何とかなるだろう。つまり、人体実験でぶっつけ本番だ。
ごそごそとリュックから色々なものを取り出していく蒼麗を、『風祢』は楽しそうに見守った。



「じゃあ、まずこれから――」








それは困る――こいつにはまだまだ役にたって貰わなきゃならないんでね








「――――っ?!」






脳裏に直接響いてきた声に、蒼麗は辺りを見回す。すると、何かが壊れる音が聞こえてきた。
それが風の枷の破戒音であると気がつき振り向いた時、絳攸の体は宙に浮かぶ見た事も
無い青年の手の中にあった。濡れる様に艶やかな黒髪と不思議な光を宿す灰色の瞳、
そして妖艶な美貌を持つ青年は男女問わずに魅了する様な美しい笑みを浮かべていた。
――が、蒼麗は瞬時に悟った。



こいつ、絶対に――





「鬼畜」




慌てて口を手で押さえたときには遅かった。
相手にばっちりと聞こえていたらしく、美しい笑みが楽しそうな笑みへと変わる。



「――へぇ……勘は鋭い――か」



「鋭いっていうか、周りに鬼畜が多いから……ってそんなんじゃなくて!!
貴方一体誰ですか?!」



あの男が風の枷を破戒したのは間違いない。それほどの力を有する男。
しかもこの空間の歪んだ場所に気配すら感じさせずに現れるなんて絶対に只者ではない。
彩雲国にそれほどの力を有するものが……いや、違う。
この男、この国の人間と言うより――



「華僑に言われた場所に向っている途中に不思議な力を感じたから来て見れば――まさか、
こんな所でお前に出会えるなんてな……まあ、どうせお遊び気分で来たんだろうが」



でなければ、お前がこんな所に居るわけがない――と、心底楽しそうに青年は笑う。
蒼麗は訝しげに青年を見詰めた。



「貴方は………私を知っているんですか?」



「あぁ――知っているさ。あの月神の君の許婚たる少女は有名だからな」





「っ――?!」






月神の君――それは、蒼麗の許婚の尊称だ。美しく光り輝く銀の髪と瞳、
そして滑らかな肢体は正しく夜空に輝く月その物である……として、彼は物心付く前から
そう呼ばれてきた。そしてその名は有名だった。何故なら、そんな光輝の如き容姿に加え、
彼は非常に聡明で文武両道、そして多くの女性達を魅了する絶大な魅力を持っているからだ。
妙齢の女性やその家族からすれば絶好の婿がねと見るだろう。
また、その他の者達にとっても、驚異的な才覚を持つ彼は絶対的な尊敬と畏怖を
誓わせる存在である。そしてそういった者達によってその名は世界に広く轟くのだ。
けれど――それでも、幾ら有名だからといっても此処では――蒼麗の疑惑が確信へと変わる。





「貴方は……一体誰ですか?」




蒼麗の凛とした眼差しに、青年は心地よいと言う様に目を細める。
形の良い唇がゆっくりと動いた。




「俺の名は羅雁。『彩の教団』の幹部の1人。といっても、お前はそれだけでは納得しないだろう」



「当たり前です。貴方が此処の国の者ならば、私の許婚の呼び名は知らない筈です!!」




蒼麗の言葉に、羅雁は更に笑った。




「クククっ!!そうだな……確かに、そうだ。となれば、お前にはもうわかっているだろう?」




「まさか……」






私と同じ所から――






「半分は正解。半分は外れだな、その考えでは」




「なっ?!」




「お前の住む場所に俺は住んでいる訳ではない。別の場所だ」



別の場所。それが何処を指しているのかを正確に理解する事は無理だったが、
それでも蒼麗はなんとなく解った。彼は、この国の人間ではない。
寧ろ、自分と同じように……けれど、それでも自分と同じ場所に住んでいるのではない。
自分の許婚の尊称を知る事が出来る別の場所に住んでいるのだ。
でも、それが何故……そんな存在が何故此処に居るのか?
しかも、『彩の教団』の幹部の1人であるなんて……



「貴方は……」


「美しいというよりは可愛らしいな」



いつの間にか羅雁は蒼麗の目の前に立っていた。
後ずさる間もなく、その顎を捕まれ上に上げられる。



「くっ……」



「妹は圧倒的な美しさと妖艶さを誇る大輪の花の蕾だが……お前はさしずめ
野に咲く可憐な花の蕾か……」



「触らないでっ!!」






パンッ!!






羅雁の手を振り払い、蒼麗は一気に後ずさった。が、何かに躓きひっくり返る。



「きゃっ!!って、風祢さんっ?!」



下敷きにしてしまった存在に、蒼麗は驚きの声を上げる。
なんとそれは風祢だった。しかも……ガタガタと震え、顔を青褪めさせている。



「風祢さんっ?!」



一体何が……そう思って、蒼麗は気づく。もしかしたら……。
蒼麗はもう一度羅雁を見た。相変わらず楽しそうに笑っている。そしてその体からは――



「貴方の気が……風祢さんを」



怯えさせているのね、と呟いた。



「ふっ……その勘の良さは嫌いじゃない……で、その精霊の女ばかり気にかけているが、
この男はいいのか?」



羅雁は妖しく絳攸の肌に触れる。白い指が肌に触れる度に、絳攸の体がピクピクと動き、
匂い立つ様な色香が湧き上がる。




「絳攸様っ!!」




「ま、どちらにしろ今の所返す気はないがな。まだこいつらには利用価値があるし」


「こいつら?」



それってまさか……



「こんなにもお前が暴れて……劉輝、静蘭、楸瑛、邵可が何故今この場に居ないと思う?
または――来ないと思う?」



羅雁は妖しく笑った。絳攸を責苛んでいた手を止める。




「貴方っ!!まさか皆さんをっ!!」




「此処に入って直に出会ってな……たぶんお前の所に行くつもりだったのだろうが
突然現れた俺に標的を変えて襲い掛かってきた。だからそんなに戦いたいのならばと
府庫の外に出してやった」



「なんて事を……」



「別に構わないさ。どうせ外は大混乱。刀で誰かに切りかかっても、周りの殆どが
可笑しくなっているのだから正気に戻った後で罪に問われる事もない。
素晴らしい条件じゃないか」



罪に問われる事もなく人を切りつけられるなんて。




「ふざけないで!!」



蒼麗は怒鳴った。あの優しい人達が正気に戻ったとき、そんな事をしたと解れば
一体どうなるか……この男にはそんな事さえ解らないのか?


「ククク……正義感の強いお姫様だ。さてと――それじゃあ俺も行くか。
この男を外で思う存分に暴れさせてやらなきゃならないからな」




羅雁の指が絳攸の白い首筋を這う。そして――








うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!







羅雁の顔が絳攸の首筋に埋まるのと同時に、絳攸の目が見開かれ絶叫が辺りに木霊した。





絳攸様?!





「お前が随分と体力を削ってくれたからな……回復させてやったんだよ。
まあついでに、興奮剤も注入しておいたが」



妖艶な笑みを浮かべ、羅雁が蒼麗を見る。




「これで……思う存分楽しめるだろう」



「やめて!!絳攸様にそんな事させないでっ!!」




蒼麗が絳攸を求めて走る。






しかし――









その手は










届かなかった











絳攸の体を抱えた羅雁が空高く上っていき、そして――消えた。









絳攸様ぁ――っ!!








此処は直に崩壊する







自分の身が大切ならばさっさと逃げる事だ――――









「羅雁っ!!」






脳裏に声が響いてくる。最初と同じ――







お前は傷つけない………お前を傷つける事は藪蛇みたいなものだからな………








「絳攸様を返してっ!!」







奴らを敵に回す気はない……だからお前は傷つけない………けれど――それだけだ








さっさと自分の居場所に帰れ――――








そうして声は途切れる。












羅雁――――――――――――っ!!












蒼麗の絶叫が暗闇に木霊した。














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